◆茨の道(日本にいた時の清の過去ついて)
傷ついても構わない。
罵られようがかまわない。
あらゆる人全てからの怨みを俺にむけられてもいい。
それがたとえ殺意でもかまうものか・・・・・・
でもおれは立ち止まるつもりはない
この間違った道の歩みを止めるつもりはない。
苦しくても全てを投げ出そうと思っても逃げるつもりはない。
この世界に生きている限りは。
いきて生きて、この罪を抱えながら生きてやる。
しだいに傷つくことはなくなるだろう俺の心
だけどきっと腐ってしまうか、人形のように無くなってしまうか、それとも壊れてしまうか
どれかがこの先に待ち受けている。
けど、問題なのは心なんかじゃない。
人間という感情ではない。
「生きている」ただそれだけが重要なのだ。
息をすって吐いているだけの人間になっても生きていればそれでいいんだ。
生きて生きて生き続けることが唯一の自分に対しての懺悔なのだから。
失った物は戻りはしない。
それが人の命であれば尚更である。
自分が殺したわけではないのだから自分を責める必要なんて無いと誰かが俺に言った。
だが、違うだろう?たとえそれが間接的だとしてもそれが法律に引っかかるわけでなくても
例え親から言われたとしても殺したのは紛れも無い俺なのだから。
これは罪だ。
人を殺しその上で生きている俺は罪だ。
優しくて、他人を思いやれる人が死んで何故俺みたいな人殺しは生きている?
逆だろう。
俺が死ぬべきで馬鹿みたいに優しい人たちが生きなければいけないんだ。
俺が自ら命を絶てば全て終わるはずなのに、今は死にたくなかった。
やはり自分が可愛いと思っているのだろうか?
・・・・・・片腹痛いな・・・・・
そんなわけがない。
可愛いはずだったら
今
おれは
自分を
じぶんで
きずつけてないだろう
「副社長!!!」
だれかがあわてるようにおれの赤く流れている水の方の手首を掴んでもう片方のナイフを持っている手を強く止めるように掴みナイフを取り上げそこらに投げた。
「なんで貴方は何度も・・・・・・!!!」
苦しそうに叫んだのは、いつも傍に就いている大男はSPでもあり俺の世話係の者だった。
彫りの深い顔が少し歪みいつも口一文字にして無口でいたこの男はとうとうこの機会にたまりにたまった思いを怒気にし叫ぶ。
怒られていることが少しうれしいのは俺の気のせいだろうか。
無口でただ俺の監視役みたいであったこの男は俺を見ていてくれていたのだろうか。
俺を「おれ」として。
「すまない。」
何をやっているのかは自分ではっきりと自覚している。
リストカットという行為を俺はやっていたことに目の前で手当てに勤しんでいる彼に向け言った。
すると彼は目を見開けばすぐに嬉しそうに頬を緩ます。
「あなたは一人ではないんだ。だからもっと誰かに頼るべきです」
「頼る・・・・・か」
「難しいことではありません。だが今の貴方には難しいかもしれない。だけど自暴自棄になって一人で全てを抱え込んでまで頑張らなくていいんです」
「がんばらなくていい?」
どうしてもその言葉がうまく理解できなかった。でも男は続けて言う。
「懺悔するだけの生き方をする道なんかでは貴方は幸せを掴めない。だけど貴方はその幸せを捨てよとしている。貴方はあなたの本当の生き方があるはずだ。もっと自分らしい、自分の気持ちがある生き方が。」
手首部分の包帯を巻き終えると同時に男の話がちょうど終わる。
「さいごに二度とこんな真似はしないでくれ」
敬語から一人称に戻った彼の言葉は何故か大人が子供に注意するように聞こえた。
それではと普段通りの主従関係の口調に戻ればなんか寂しいような気持ちになった。
だけど、そんな些細な気持ちが彼に届いたのかぽんぽんと頭を軽くたたかれる。
「また、時間があけばこんな俺でも話相手になるぞ」と笑われながら言われた。
ありがとうとまた言おうとする自分だがその前にあることに気づいた。
名前をしらない。
ずっと小さいときから就いてもらっていたSP
すぐ傍にいることも俺にはただいるだけの存在としか見ていなかったから名前を知ろうともしなかったのだ。
「その、あなたの名前は?」
「?・・・・・ああ、そうか名前教えたけど覚えていなかったんだな」とまた彼は笑った。
「恒川湊(つねかわ みなと)と言うんだ。」
「つねかわみなと・・・・さん?」
一応上の者に対しての礼儀としてさんを付けるべきか迷って戸惑いながらも言った。
「湊でいい。会社の中ではこうもいかないが清、お前の時間が空いているときはいつでもいい困ったことでも苦しいときでも自分が駄目になりそうになった時でもいい俺に頼れ。全部受け止めてやるから。」
な!と嬉しく思いながらも指きりをし約束をした。
でも、俺に恨みをもった人がある日俺を狙って高らかと「死ねっ」と叫び銃弾を撃ったがそのとき湊は俺を銃弾から庇い意識不明の重体になってしまった。
そのときびくびくしながら彼を病院の集中治療室で見守っていたことを覚えている。
彼は運良く大事にもならなかったし何か障害を受けることも無かったが俺は新たな決意をした。
退院した湊が真っ先に俺に会い、大丈夫かとあのとき怪我とかしなかったなど心配してくれた。
他人を心配するより自分を心配しろと俺は笑いながら言い返す。
そう笑った。
一度も笑おうとしなかった自分が笑うという仮面を作ったのだ。
「清・・・・・!」
「これが最初で最後の本当の笑顔。けどこれからは違う」
「何が・・・・・?」
おそるおそると返された質問、湊はきっと薄々と感づいているかもしれない。
「傷ついたっていい。苦しくたっていい。駄目になってもいい。それでも俺は何度でも笑ってみせる。
この仮面をかぶる。」
何度でも嘘をつき。
なんどでも自分を偽ろう。
そして誰も傷つけさせない。
すべてを守ってみせる。
そう傷つくのは自分だけでいい。
もう初めて出来た大切な人を傷つけさせたくないから。
こんなおれがこのような言葉を言うのは虫唾が走る。
けど、これだけはと譲れない。
今更かもしれない。
けどそれでも守りたいから。
「・・・・清」切ない声が聞こえるけども彼自身が悲しいような声が聞こえるけども
これが
これが俺の生き方なんだ
「そうこの荊の道がおれの生きる道なんだ。」